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toona note

ザ・ダークパターン: 感想

書評書籍情報

  • 書籍タイトル: ザ・ダークパターン
  • 著者名: 仲野 佑希(著)
  • 出版年: 2022/8/3 (2022/10/15 初版第 2 刷)
  • ページ数: 222

読書動機

web サイトのデザインに興味を持ち、勉強することにしました。

いいデザインの良さを説明するのは難しいです。
しかし、気に入らないデザインの何が嫌なのかを説明するのは比較的簡単なように思います。
ならば、デザインの最初の一歩に、ダークパターンを学ぶのは良い戦略なのでは? と考えて、読み始めました。

内容要約

本の概要

web サイトの運営者が利益を得るために作製した、意図的にユーザーの意図に反する挙動や、ユーザーを騙すデザインをダークパターンといいます。
本書では、ダークパターンの種類・影響や、規制の現状について紹介されます。
提示されるほとんどのダークパターンは、ダークパターンを利用した企業等を非難することの無いよう、著者がダークパターンの要素を取りだした図を用いて紹介されます。

主要なトピック/章

Chapter1

そもそも、ダークパターンとは何か? 失敗したデザインと異なり、ダークパターンは意図的に仕組まれたデザインです。
本書の対象範囲は、ユーザーを騙すために意図的に仕組まれたダークパターンであると述べられていました。
また、ダークパターンがユーザーに与える影響と、ダークパターンへの規制の現状について触れられます。

Chapter2

ダークパターンが、なぜユーザーに影響を与えるのか? 認知科学の方面から説明されます。

Chapter3

ダークパターンの種類について紹介されるとともに、長期的には、ダークパターンを用いないことで、競合に対して、優位な立場になれることについて説明されます。

Chapter4

ダークパターンが生まれる背景について説明されます。
具体的には、ダークパターンは個人の悪意によって生まれるのではなく、組織が個人や部署に課す目標などの圧力によって発生し得るというストーリーが示されます。

理解と学び

理解できたポイント

  • デフォルト効果 p80 のようなサイトは見たことがないですが、p81 のようなサイトはありそうに思います。
  • 確かにデフォルトから設定を変えるのは心理的に障壁があります。 インストール設定などはほぼデフォルトにしてしまいます。
  • p87 hidden cost, amazon の比較で、商品を安くして送料を高くすることで、安いように見せかけて、優位に立とうとする出品者を思い浮かべました。
  • p94 コストが何に使われたか明示されないというのは、コロナ流行中に大学施設を使用しないのに設備費を要求する大学などもダークパターンと言えそう。 web サイトに限らず存在するように思う。
  • p115 視線誘導について。単純に面白いです。 元ネタのサイト
  • 最近の web サイトの広告は非常に煩わしい。 広告が動画だと目も取られるし、通信量も気になります。
  • p144 成功指標の設定ミスにより生じるダークパターンは全ての指標はハックできるという機械学習の言葉を思い出しました。
  • p156このサイトを説明するために、作者が作成したと思われる図が珍しい図で興味深かった。 xy 座標に項目を配置し、交点に点を打つことで、項目の有無を示しています。自分だったら、表を作成して、チェックを入れます。そんな見せ方もあるのですね。

学んだこと

「利用者の期待値を下回らないこと」という指標は、web デザインに限らず活用できそうに思います。
例えば、企業のプレスリリースや、技術系の研究発表でも同じことが言えそうです。
プレスリリースは宣伝目的なので、大きなことを言ってしまい、後で、ユーザーの期待に添えない、というパターン。
研究発表も、自分の研究の有効性を提示しますが、実はごく限られた範囲でしか効果がないとか。
最近は、何でも大げさに言うことが横行しているように思います。
これらの行いも、ダークパターンと同じく、将来規制の対象になるかもしれないと考えました。

質問と疑問

p162 で損失回避の法則を、機会損失にまで拡大して用いているようです。
機会損失は、用語に「損失」と入っていますが、すでに持っているものを失う「損失」とは異なるように思います。
損失に対する期待値などの、確率的な面もあるはずです。

理論として、機会損失を損失回避の法則に当てはめるのが正しいのかが気になりました。

ノースメトリックの例で出てくる uber の 「乗車予約数」 はノースメトリックとして適切なのでしょうか?
これはビジネスの成功指標に感じます。
例えば、ユーザーがうっかり乗車予約してしまうダークパターンでハック可能なはずです。
したがって、ここで例示されている他の指標に比べて、適切ではないように感じました。

理解が不十分な点

p180 では、ビジネス側の成功指標だけにフォーカスすることの危険性が説明されました。
特定の指標にフォーカスする危険性は、同意できるものです。
しかし、例示されているものが、売上を指標とした AB テストと何が違うのかが理解できませんでした。

質問や疑問

次のステップ

Web Designingという雑誌を購入しました。
次はこの雑誌を読んで、ざっくりと感覚を掴むつもりです。

読みやすさ評価

文体と構成

章分けに、やや難しさを感じました。
例えば Chapter2 では、ナッジ理論やデフォルト効果など、足早に並べたてられており、やや困惑しました。
本を読み終わった時に、~~について記述されている箇所はどこだったかな? と探すのに時間がかかるように感じます。

読みやすさ

文体は非常に読みやすく、キャプションや図も見やすいです。
さらっと読めます。