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toona note

『グラフのウソを見破る技術』書評

本の情報

アルベルト・カイロ(著) 薮井真澄(翻訳)

なぜ読んだのか

この本は amazon で見かけて興味を持ちました。

仕事において、グラフを作成する機会は意外に多い。
人への結果の報告のためや、自分の考えをまとめるためだったり。
どちらにせよ、誤解を招くグラフは悲劇的な結果を招く。

では、誤解を与えるグラフの例を学ぶことができれば、見やすく、理解しやすいグラフを作れるのでは?
そう考えて手に取りました。

内容

グラフを見る人を意図的にだまして、間違った方向に導くグラフと、そこで使われているテクニックが紹介されています。
たとえば、折れ線グラフの目盛をいじったり、グラフを 3D にして視覚的な誤解を誘ったり、ヒストグラムの原点を 0 にしなかったりなどです。

紹介されているデータは、アメリカのデータが多くとっつきにくい印象です。
とくにアメリカの選挙関連のデータは私にはわかりにくかった。

また、軸を意図的にゆがめていない、フェアなグラフであっても読み手には知識が要求されます。
それらの知識についても紹介されています。

たとえば、データの層化は適切か? 因果関係の主張は正しいのか? サンプリングは適切か? そもそもデータが歪んでいないか? などが語られていました。

読むのにかかる時間

私は 5 時間ほどだったと思います。
早い人ならば 2~3 時間程度で読み切ってしまうのではないでしょうか。

新しい知識

詐欺グラフについては、学生実験レベルでも怒られるようなどこからどう見てもおかしい物が紹介されていた。
「まさか、こんなグラフで何かを主張することはないだろう」と思いましたが、調べてると、日本でも沢山あるようです。
詐欺グラフを紹介したサイトを見つけることができました。

本書で新く得た知識はありませんが、改めて気をつけないといけないと感じることができ、収穫はありました。

感想

私の期待していた内容とは異なりました。

期待していたものは、意図せず誤解を与えてしまうグラフとそれを避ける方法。
本書に載っているのは、意図して誤解を与えるグラフと、グラフの読み手として騙されることを回避する方法です。

そもそもタイトルが、「グラフのウソを見破る技術」なのだから、グラフ作成者側の見方を期待した私が悪いです。

それでも、「グラフを見る人は多くても読む人は少ない」という考えを得られたことを収穫でした。
普段から、「グラフに書いてあるだろうに…」「なぜこのグラフが読めないんだろう?」と感じることが多かったのですが、「グラフを見る人は多くても読む人は少ない」という言葉をまさに、この疑問の解答を言語化したものです。

では、「グラフを読まない人」に対する報告では、どのように対策するとよいのでしょうか?
メンタルモデルのあるグラフ(広く知られている)を使うことにするのがよいのでしょう。

例えば本書は最後に、ナイチンゲールのくさび型グラフを、素晴らしいグラフとして紹介しています。
ですが、くさび型グラフは、多くの人にとって、メンタルモデルのないグラフです。
したがって、くさび型グラフは、眺めるのではなく、読むことを要求します。
つまり、報告スライドにポンと挿入しても全く役に立たないグラフです。

結局「他人への説明用グラフ」として、当たり障りがなく、情報を省いたグラフと、「解析者の自分用グラフ」として考えを整理する詳しいグラフが必要なのでしょうか?