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toona note

『プログラミングのための線形代数入門』 書評

本の情報

平岡和幸(著) 堀玄(著)

なぜ読んだのか

統計の勉強をしていて線形代数力が足りないと感じることが多いからです。

式変形は追える。しかし、何を意味しているのか腑に落ちない。

だから、線形代数の復習を考えました。
やるなら、意味の分かるものにしたい。
自分は物理系の人間せいか、過度に数学的なものは好きではありません。
大学時代を思い返しても、数学は「この証明は、次の証明に使います。」という講義ばかりで、「で?なんの役に立つの?」と感じていました。
今回は数学のための数学ではなくイメージをつけることを目的としたい。

このようなテーマをもって、線形代数の本を選んで、まずは本書を手に取りました。

内容

線形代数のイメージをつけることに重きを置いており、「行列は写像である」という明確なメッセージがある。
最初に書いてあるように、プログラムを推し進める本ではなくて、線形代数を道具として理解したい人向けの本であるように感じました。
自分が物理系であり、純粋数学の人のような頭はないので、このすすめ方は非常にありがたいです。

各章にレベルが設けてあり、

レベル 1 本の数式が追えるようになりたい
レベル 2 線形代数を使う本の意味がわかりたい
レベル 3 自分で計算ができるようになりたい
レベル 4 大規模行列計算をしたい (プログラム)

という感じです。
とりあえず自分はレベル 3 で進めました。
レベル 3 ですと、章立ては 1 章で写像としての行列のイメージをつけ、2 章でランクのイメージと行列式の利用、4 章で固有値、対角化、Jordan 標準形と進みます。

固有値、対角化も、制御の暴走判定という、数学のための数学にならない説明がなされていました。

読むのにかかる時間

私は大規模行列計算はとりあえず必要ないので、レベル 3 で読みました。

土日と仕事後で 2~3 週間なので、~40 時間くらいでしょう。
本書は注釈に「「え?」って人は ~p へ」と書いてあり、前提知識の確認が簡単にできます。
何度か同じところを読み返して、イメージできるようにしたので、時間がかかり気味です。
とくに 4 章は結構時間がかかりました。

新しい知識

「異なる固有ベクトルの固有値が同じになることはある。」
「固有値が異なる固有ベクトルは線形独立。」

等のことが、数式をゴリゴリ押さなくても、イメージとして当たり前のことだと感じられるようになりました。
これが一番の収穫です。
数式を追えばわかるけれども、それは理解することとは違うように感じていたので、まさに欲しかった知識が得られたと思っています。

感想

本書にたまに出てくる表現の「ぐっと睨んで」というのがいいです。
プログラムでも全体的なイメージが頭に入っていればグッと睨んでバグが探せますし、物理学でグッと睨んで何とかなるときは、現象のイメージができているときです。

本書を読んだ目的は、まさに、数式を睨むことでした。
もともと、数式に対するイメージがなかったために、1 章を読むだけでも、数式を睨む力がつきました。
私にとっては素晴らしい本でした。

4 章は複雑なので、もう一度目を通す必要があります。
また、イメージを大切にしているため、進行が若干スパゲッティになっているようには感じました。